ラットホールギャラリーでは2014年11月14日(金)より2015年2月xx日(x)まで、ジョン・ジェラードの個展を開催いたします。リアルタイム3D技術を駆使したプロジェクション作品と映像ディスプレイ作品が発表される本展は、日本ではじめてジョン・ジェラードの作品を目にすることができる機会となります。
John Gerrard
Sow Farm (near Libbey, Oklahoma) 2009
2009
Courtesy of the artist and Thomas Dane Gallery, London
1974年、アイルランド生まれのジョン・ジェラードは、本来は軍事用に開発され、現在では主にゲーム産業で用いられている技術、リアルタイム3Dコンピュータ・グラフィックスを駆使し、仮想世界を取り込んだ作品を制作する作家として知られています。主に、地理的に孤絶した場所で稼働している農畜産業の姿を、数千枚の写真からなるヴァーチャル3D映像として、時の経過やその他の環境要素と合わせて作品にしています。
本展では、大型のプロジェクション作品Sow Farm (near Libbey, Oklahoma) 2009と、映像ディスプレイ作品Sunspot Drawing (Guantanamo City) 2012の2作品が展示されます。Sow Farmでは、大量の分娩に従事する雌豚が収容された、大規模ながら目に見えない、アメリカ中西部に実在する農畜産業体が描写されています。畜舎の周囲を360度ゆっくりと旋回するカメラは、24時間365日のサイクルで、畜舎のある風景を映し出しています。またSunspot Drawingでは、グアンタナモ(キューバ)のとある道に夜明けから日暮れまで、作家自身が虫眼鏡を手持ちで掲げ続けているシミュレーション作品です。365日の時間経過に従って変化する、しかし仮想上のものでしかない太陽光線が生み出す光の焦点を、見る者は目で追うように導かれます。
ジェラードの作品は一見、ビデオアートなどとの類似性を感じさせますが、写真・絵画・彫刻・映画といったジャンルの境界を取り外し、さらにはその境界を拡大していく点で、「写真的立体作品photogrphic sculptures」とも言えるような特異な性格をもっています。ハイパーリアリズム的な不気味さとある種の崇高さによって特徴づけられる彼の作品は、エネルギー問題、政治・経済、そして戦争といったテーマが強調され、現代社会の栄華を下支えしているグローバルな生産ネットワークの見えざる部分へと関心が向けられています。
ジョン・ジェラードは、オックスフォード大学で美術・絵画の学士号を、シカゴ美術館付属美術大学で博士号を取得し、現在はウィーンとダブリンを行き来しながら制作を続けています。第53回ヴェネチア・ビエンナーレ(2009)での個展を含め、これまで国際的に展覧会が開催されています。現在は、ニューヨークのリンカーンセンタ―で、パブリックアート作品Solar Reserve (Tonopah Nevada) が公開中です(2014年10月3日〜12月1日)。
John Gerrard
Sunspot Drawing (Guantanamo City) 2012
2012
Courtesy of the artist and Thomas Dane Gallery, London
John Gerrard
Solar Reserve (Toponah, Nevada)
Installation view at Lincoln Center, New York City
2014
Courtesy of the artist and Thomas Dane Gallery, London
|